欧州サッカー界において、2017年の夏は驚愕の移籍が実現しました。
まさかの、バルセロナからパリ・サンジェルマン(PSG)へと電撃移籍したネイマール選手がその主役でした。
日本円にして、およそ290億円もの契約解除金をPSGがバルセロナに支払うことで、このビッグオファーはまとまりました。
そして、欧州各国で新しいシーズンが始まり、ネイマールがやってきたフランスの「リーグ・アン」には例年以上にサッカーファンの注目が集まることになります。
そんな中、ネイーマルを失ったバルセロナの永遠のライバル、レアル・マドリードに所属する、イスコ選手が、クラブと2022年まで契約を延長したことが明らかとなりました。
そんなイスコ選手の契約について、ありえない「契約解除金」が設定されたのではないかと注目を集めているのです。
その額・・・日本円で約910億円。
ネイマールの3倍を超える金額が設定されたと報じられているのです。
実際のところは当事者しか分からない状況ではありますが、それが事実ならレアル・マドリードにとってイスコは失いたくない選手と断言できることになります。
ただそこで気になるのが、サッカー界でよく耳にする「移籍金」と、今回の「契約解除金」では何が違うのかということ。
どちらも選手の移籍交渉に関わるお金の話だけに、それぞれがもつ意味とはどういうものなのか?
滅多にこのブログでは書かない?サッカーの『契約解除金』について取り上げてみたいと思います。
サッカーにおける契約解除金とは?
移籍金とは別の存在となる『契約解除金』ですが、その意味するところは、クラブと選手が交わした契約に対して、その書面において定められた一定の金額を支払うことで、選手、もしくはクラブ側が一方的にその契約を解除することができる制度のことです。
要は、通常行われるはずのクラブ間での選手に関する移籍交渉がなくなるというものになります。
サッカーにおける移籍交渉は、通常はクラブが所属選手に設定した「移籍金」をもとに、クラブ間の交渉を行い、同時にその選手が欲しいクラブは選手の年俸を提示して交渉を同時に進めるのが一般的です。
その交渉においては、選手を売る側のクラブと欲しい側のクラブの思惑を踏まえた駆け引きが行われるため、交渉が決裂するケースも少なくありません。
たとえ選手が移籍を希望して年俸などの条件がまとまっても、クラブ間の交渉が成立しなければ、その選手は今の所属クラブから離れることはできません。
売る方は「できるだけ高く選手を売りに出したい」、買う方は「少しでも安く経費を抑えたい」となります。
しかし『契約解除金』を設定している場合は、このクラブ同士の話し合いをしなくても、選手個人が移籍に同意すれば、欲しいクラブは設定されている解除金を支払うことで、問答無用でその選手を獲得することが可能となります。
これがホントの金で買うというやつです。苦笑
ある意味「裏技」的な契約解除金の支払い方法は問題あり?
この夏移籍したネイマールの場合は、バルセロナが「この金額ならどこのクラブも手が出せないだろう」と想定した額でした。
しかしながら、パリ・サンジェルマンは違いました。
クラブを買収したカタール企業のオイルマネーによりその金額が一括で支払えるだけのキャパがありました。
そのため、衝撃の契約が実現する運びとなったのでした。
これに怒った(焦った)のがバルセロナでした。
まさかの金額をフランスのクラブが支払うという展開に、バルセロナは「ファイナンシャル・フェアプレーに違反するのでは?」と、パリ・サンジェルマンの動きをけん制しました。
この動きには、ネイマールというスーパースターを失うこととなるスペインリーグも敏感に反応。
リーグ機構の、テバス会長が法廷闘争も辞さないとも受け取れるコメントを出し注目を集めました。
※ファイナンシャル・フェアプレーとは、クラブがサッカーにより得た純利益を、選手の獲得や人件費の支払いの方が上回ることを制限する制度です。(違反か否かの審査は対象となるシーズンから過去3シーズンに遡った合計で判断します)
実際のところ、ネイーマルを獲得したパリ・サンジェルマンの場合は、普通に考えると「ファイナンシャル・フェアプレー」に接触してもおかしくない事案ですが、そこにはある裏技的なやり方が用意されていました。
パリ・サンジェルマンは、『契約解除金』をバルセロナに直接支払わないという方法をとったのです。
パリ・サンジェルマンはネイマールに対して、2022年にカタールで行われる「ワールドカップ カタール大会」の大使(広告塔)に任命し、そのギャラとして『契約解除金』相当の額をネイマールに支払いました。
そしてネイマールは、そのお金をバルセロナに対して『契約解除金』として支払いました。
この支払いについては、バルセロナがネイマールの名義で支払いがあったことを公に発表しています。
そのため「ファイナンシャル・フェアプレー」の違反にはならないということになります。
なりますというか、完全に契約の盲点をついた裏技です。苦笑
正直、ネイマールのケースはかなりレアなものになると思いますが、金満クラブがこうやってスター選手を買い集める手法については、一サッカーファンとしては複雑ではあります。
スター選手が集まればそのチームは華やかで見惚れるようなサッカーを見せてくれるとしても、そのしわ寄せでチーム格差がより強くなる状況はありがたくないです・・・。
『契約解除金』が選手によっては信頼のバロメーターに?
話を戻して、今回のレアル・マドリードのイスコの契約延長に対して本当に900億円を超える『契約解除金』が設定されているのであれば、ひとまず今後4年間は相思相愛の関係でいると表明したことになります。
さすがに900億円を超える金額を一括で支払うようなクラブが出てこないでしょうから。
イスコ自身も、他のどのクラブでもなくレアル・マドリードでサッカーするという意思表示をしたと言えます。
一時は、バルセロナが獲得を目論んでいると騒がれて「禁断の移籍実現?」も心配されましたが、今回の契約延長でマドリディスタも一安心といったところでしょうか。
ただ、サッカーにおいて選手の移籍というのは、ビジネス的な面が強いです。
選手を売るために育てているクラブもないとは言えません。
それだけの巨額マネーが動くことを思えば、選手にとっても神経質にならさる得ないところです。
ちなみに、レアル・マドリードといえば、エースのクリスティアーノ・ロナウドの場合、契約解除金は1300億円超えとも言われていますが、果たして真相はどうなのでしょうね。
こうしてみると、『契約解除金』の金額設定次第では、「君はどこのクラブにも売らない」と、手放したくないというラブコールを送られていると受けとることもできるので、選手にとってはクラブから自分に対する<信頼のバロメーター>みたいなものかもしれませんね。
と、最後はキレイにまとめてみました。笑