2018年3月1日に行われた、ボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ、「山中慎介対ルイス・ネリ戦」。
山中選手にとっては、タイトルを奪われた相手とのリベンジマッチでしたが、試合は2ラウンドにネリがTKOで山中選手に勝利しました。
この試合、一言で言えば久しぶりに不愉快なボクシングを見ました。
試合前日の公式計量でネリ選手が、2.3キロというありえないレベルの体重オーバーがあり、まさかのタイトル剥奪。
この瞬間、試合はタイトルマッチと呼べるものではなくなりました。
このタイトルマッチにすべてをかけてきた山中選手にとっては、怒りを通り越して呆れるレベルの状況のため、ここから翌日の試合へのモチベーションを保つのは相当辛かったと思われます。
しかし、ボクシングの世界ではこのような事態が起こっても試合は予定通り執り行われます。
山中選手にとっては、とにかく勝てば王者返り咲きという試合にはなりますが、そう簡単な話ではなかったはずです。
今回の問題で、あらためてボクシング界の闇を見たような気分になりました。
計画的としか思えないネリの体重超過
試合前日の計量で、異常とも思える2.3キロの体重超過を犯したネリ選手。
チャンピオンとして、試合に向けて減量に取り組んでいたとは到底思えない計量結果です。
この時点で、ネリの階級は山中選手より上になります。
たかが2.3キロと思う人もいるかもしれませんんが、ボクシングなどの格闘技では決定的なパワーの差として現れます。
体重が乗ったパンチの重さは1階級違えば別物とされるのがボクシング。
しかも試合当日のネリ選手は、2階級以上上の体重とまで言われています。
ネリ選手の体重超過は計画的だったと思われても仕方がない気がします。
たしかにタイトルは剥奪され、試合に勝利してもネリは王者でもなんでもありません。
しかし、勝てばデビュー以来無敗という記録は守られるという現実がそこにはあります。
ここがボクシングの不思議なところで、本来であればルールを守れなかったのだから、その時点で敗戦扱いであるべき。
ボクシングにおいてはこのような場合には敗戦扱いにはならず、試合そのものはほぼ間違いなく続行されます。
そこには、このような状況でも挑戦者は勝利すればチャンピオンになれるということはもちろんありますが、それ以上に興行的な理由が大きいのは疑いようがありません。
入場収入やテレビ放映収入など、大きなマネーが動く以上、中止にしてしまえば誰にもお金は入らずむしろマイナス。
そのため納得がいこうがいくまいが試合は行われるのが通例。
これらのことを踏まえると、ネリ陣営は意図的に体重超過を行い、山中選手より上の階級のパワーを維持して、試合に勝利することのみを狙ったと言えます。(個人の感想です)
チャンピオンの座は、また狙うことができますが、一度ついた敗戦は消せません。
ネリ選手にとっては、万全を期して「無敗記録を守る」ことがもっとも重要だったのは明らかでした。
『神の左』のラストマッチがこれでは寂しすぎる
前回の対戦でネリにベルトを奪われた山中選手にとっては、王者に返り咲く以上に、ネリへのリベンジという思いが強かったと思われますが、結果的に連敗となり山中選手は試合後に「引退」を示唆しました。
試合前から負ければ引退は確実だと多くのボクシングファンは感じていたと思いますが、このような展開での引退は、『神の左』と呼ばれたボクサーの最後としてはあまりにも寂しく、腹立たしいい思いしかありません。
勝っても負けてもフェアな状態であれば、本人もファンも納得のいく試合になったはずですが、ネリ陣営の愚かな行為ですべてが台無しとなりました。
思えば前回の対戦でも試合後に「ドーピング問題」が噴出したネリ選手。
異常なまでに盛り上がった両肩の筋肉はそのためかとの声も少なくなかった一戦でした。
恐ろしいことにどこまでも怪しいこのボクサーは、今回のリベンジマッチ後に「フェジカル面でのメリットは山中選手の方があったはず」とまで口にしています。
「ありえね〜」とはまさにこのこと。苦笑
こんなネリ選手に、山中選手が所属する『帝拳ジム』の本田会長は「追放してほしい」とまで口にしました。
山中選手のプロ意識の高さを間近で見続けてきた会長だからこそ、より怒りが大きかったのは容易に想像できます。
ボクシング界は本気でルール改正に取り組むべき
ネリ選手のような体重超過でタイトルを剥奪されたケースは、ボクシング界の「あるある」のようなものにいつのまにかなってしまっているようです。
本来、ウエイトによって細かく階級が分けられているボクシングというスポーツ(格闘技)において、体重管理は最も重要なことと言っても差し支えないはず。
にもかかわらず体重超過を理由にタイトルを剥奪されるボクサーが次々出ているのは異常です。
そこには、チャンピオンになったことで、大金を手にいれてハングリーさを失った選手もいれば、ネリ選手のように意図的にルールを破る選手もいたりするのでしょう。(個人の感想です)
本来であればこの時点で失格となり試合を行うべきではありませんが、ルールよりもビジネスが優先されるため、試合そのものは行うような仕組みがあるのが現実です・・・。
たしかに、予定通り試合を行うことによって、選手はファイトマネーを手にいれ、入場チケットを手にしたファン、中継を行うテレビ局などに対する責任も果たすことになると言い換えることはできるのかもしれません。
しかしそれはあくまで主催者側の都合。
選手のファイトマネーは、興業によって発生するこれらの収入が重要である以上、わからないでもありません。
それを踏まえても、このようなルール違反がまかり通っていればボクシングファンが減るのは確実。
そのようなことにならないためにも、体重の超過という問題についてボクシング界は本気で改革に取り組んでほしいものです。
ルール違反へのペナルティの厳格化はもはや必要不可欠。
今回の一戦で、悪質なルール違反を犯し、反省しているようなそぶりを見せながらも、いざ試合で勝利した瞬間にコーナーポストに上がって歓喜の雄叫びをあげたネリ選手をテレビで見たときボクシングが嫌いになりそうになりました。苦笑
このような悪質なボクサーを生み出さないためにも、早急なルール改正を願いたいものです。