角界の闇を描いた『貴の乱』が読んでみたら貴乃花親方が関わっていない本だった話

takanoran_1

何かと闇が深い角界において、昨年大きな衝撃を与えた横綱「日馬富士」による暴行事件と日本相撲協会と貴乃花親方の確執事件。

昔から取りざたされている「八百長問題」も含め、相撲界の裏の顔に対する世間の関心が高まっている中、一冊の本が発売されました。

それが、『貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」』です。

貴の乱』と表紙にも大きくタイトルが書かれていて、貴乃花親方の写真が使われているため、貴乃花親方の著書のように思える一冊ですが、親方は一切関わっていないものでした。苦笑

どうやら「週刊ポスト」の記者さんによる暴露本的な書籍のようです。

いかにも貴乃花親方が関わっているかのような作りはどうかと思いますが、角界の内情を知るとういう意味では、それなりに興味深い一冊ではあるような気がしないでもありません。

『貴の乱』における注目ポイントは「理事会議事録」

takanoran_2

今回の書籍『貴の乱』においてもっとも注目すべき ポイントは、日馬富士暴行事件の方ではなく日本相撲協会における権力闘争。

それをうかがわせる「理事会議事録」の内容を完全収録しているところになると思われます。

2015年12月に開かれた理事会の議事録を全文掲載することで、元理事長の八角親方一派と貴乃花親方一派の対立の構図や、「裏金顧問」と称されるK氏の存在についてなど、文面から相撲協会の権力闘争が感じ取れます。(このK氏の汚職についても本書では色々と取り上げられています)

昨年の日馬富士暴行事件後の理事会で対峙した八角理事長と貴乃花親方の異様な光景も納得の関係性なんだなと思わずにはいられませんでした。苦笑

『貴の乱』では、理事会議事録以外にも、タイトルにある「日馬富士暴行事件」の事件当日の状況を活字ではなく漫画鳥取の惨劇として紹介するといった一面もあります。

takanoran_3

事件の概要については、これまでにテレビやネットニュースでも詳細に紹介されていますが、漫画の方でもほぼほぼその通りの内容となっています。

角界の八百長問題は永遠に続く?

貴の乱』では、相撲協会内部の金にまつわる問題がかなり大きく取り上げられていますが、NHKや他の組織なども含め、様々な利権が渦巻く角界の長年の膿が溜まりに溜まっているということはもはや疑いようのないところ。

ともかく、金、金、金って状態です。苦笑

ただ、個人的にはそれ以上に気になるのは、やっぱり「八百長問題」です。

そもそも昔から相撲については八百長疑惑が常にありましたが、かつての「野球賭博」問題によって、八百長が実際に行われていたことが発覚したり、八百長が横行していたとされる千代の富士全盛期の話なども本書では取り上げられています。

当然ですが、日馬富士暴行事件によって、大きな注目を浴びた「モンゴル力士会(互助会)」の存在についても触れられています。

これらの八百長問題については、相撲協会が行なっているのは「興行」である以上、プロレスとはまた違った意味で台本があるのも妙に納得であったりします・・・。

タイトルは『貴の乱』だけど貴乃花親方推しではない一冊

takanoran_5

八百長を嫌うガチンコ力士であった貴乃花親方と、その弟子である貴ノ岩が相撲協会に押さえつけられそうになっているというイメージが世間一般ではあるため、『貴の乱』を目にした方は第一印象として、貴乃花親方の反論本、暴露本のような印象をもってしまうかもしれません。

しかし冒頭でもご紹介したように、本書の執筆・出版にあたって、貴乃花親方は一切関わっていません。

あくまでマスコミが相撲協会の問題を取り上げた一冊です。

その問題の中心人物である貴乃花親方をクローズアップすることで、出版社の『宝島社』はこの本を売りたいということでいいかと。苦笑

とはいえ、読み終わってみてその内容は必ずしも貴乃花親方側という立ち位置ではありません。

むしろ、貴乃花親方についても、裏金問題で知られるK氏との関係性についても掲載しています。

要は、登場人物すべてが何かしら疑惑を持たれているという設定です。

そのようなこともあり、今回の『貴の乱』については、かなり読者の意見が割れるように思います。

個人的には、問題を闇に葬り去ろうとする八角理事長体制の相撲協会に対しては憤りを感じますし、そこに立ち向かう貴乃花親方という構図は、どうしても貴乃花親方を応援したくなるところ。

閉鎖された角界の問題は相当根が深いのは疑いようがありませんし。

しかし、たとえそうだとしても、相撲協会における権力闘争という意味では、貴乃花親方にも全く問題がないとは言えないようには感じます。

お互いの言い分が平行線を辿る中、さらに気になるのは・・・・・

モンゴル人力士が大きな存在となりつつある角界において、この先、白鵬が理事入りするような時代がやってくること。

事あるごとに「品格」を問われる横綱が、近い将来、相撲協会において権力を手にいれたら一体どうなるのか?

相撲協会の闇は闇のままで、さらなる問題が山積みとなるのは避けられないのかもしれませんね。

ということで、本書を読んだ上で相撲協会が抱える様々な問題を踏まえて感想を言うならば、「角界の清浄化なんて永遠に無理だろうなって」ことになります。

そんなネガティブな気持ちにさせてくれる一冊、『貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」』。

途中で漫画もあるし、一気読みできる構成にはなっていますので、今一度「角界」の様々な問題について整理すると言う意味では悪くない一冊なのかもしれません。

スポンサーリンク
スポンサーリンク